マッピングは二つの意味を持っている。一つの意味は地図を作ること。地図は地理的な特徴を現すものだか、自然現象の他に人間の存在や文化的な背景の表現には物足りなさがある。そこで風土に着目した、風土とは単に気候のみでなく、地形、水、土壌、植生や、さらに歴史的建造物など多くの要素を含む。風土は英語でclimateという単語に当てられる。climateの語源は古代ギリシャ語で「傾き」という意味。太陽の光の傾きが場所によって異なることからこの意味が当てられた。地質や気候のような目に見える物から、微生物や文化に至るまで、地域全体が「傾き」を持っている。地域が変わると「傾き」も変化する。それぞれの「傾き」にはまた、それぞれのマッピングが存在する。もう一つは物体の表面に、絵や模様、凹凸のある質感、周囲の風景などを貼り付けること。たまたま見かけた壁の隅っこに苔が生えていて、その光景に惹かれた。時間と風雨に浸蝕されていくうちに、壁は軟化し、変色し、そして亀裂を生じた所に種が棲み、また成長していく過程は時間と風土によるマッピングだと考えられる。

コンクリートは強度や耐久性があり、建築物、道路、ダム、高架橋、トンネルなどに多く使われ、今や人間生活に不可欠なものになっている。この製作では、自ら制作したコンクリートの立方体を世界の各所に置いていくプロジェクトを実行した。10cmx10cmの2kgのコンクリートの立方体はやや重みを感じさせ、多くのコンクリートの使用実例を参考してパータンを造形し、天地左右対称の深さ1cmの溝槽を引いた。多くの手を借りてできたプロジェクトは、多くの可能性に富んでいる。空間と時間の軸を超えて、人の繋がりが見えてくる。今まではイギリス、オーストラリア、イタリア、ドイツ、オランダ、フランス、アメリカ、中国、台湾、日本の11ヶ国の33カ所にマッピングができた。但し、これは卒業で終わらない。これから年月をかけて実験を続け、これからどんどん想像もつかない展開になっていく。